化鳥
雨が続きますね。晴れ間が貴重な時間に思えるほど、、そんな時は窓を開けて外気を取り込みます。大きな音では弾きませんが、窓を開けたときこそマリンバを奏でる気持ちが弾みます。ちょっとだけ、、ポロロンと打てば鳥が呼応する。昼間にピーロロ、ピーロロ、鳥の名前はわかりません。今日はまた雨、、締めきった部屋でシャッターも降ろし、弾いています。
先日亡くなった八千草薫さんの出演映画としては、あまりメディアには記載されていない「田園に死す」、岸辺のアルバムなどのテレビドラマなどが印象的ではありましたが、私はこの田園に死すを外せません。何しろ、私の故郷の田園や線路が撮影地として選ばれていることも含め、八千草薫さんの登場するシーンの儚さ、危うさ、翳り、色香にまず魅せられます。寺山修司ワールドには異色すぎる配役ではないでしょうか。いえ、この映画の格付けといったらなんですが、全ては八千草薫さんの存在感あってこそ、と勝手に私自身は感じています。
八千草薫さんも恐山ロケに関わっています。そのシーンはちょっと衝撃的ではありますが、観ていて時間を巻き戻したいと思わせる俳優の登場でした。寺山修司のこの作品での「時計」の意味は如何様にも解釈はできそうですが、現実にこの映画を観る側に求められているような衝動、時間は過ぎ去るものだけど、時間を止めることはできないけど、永久的とは言えないその儚い「間」において、時を戻せぬ人との交わりを命とする、そんな残酷さに似た恋慕、あなたは本気で誰かを愛したことがありますか?というようなテーゼを植えつけられるかのよう。
映画は自由な鑑賞法で良いのですが、このドロドロっとした万人受けはしない映画の中で、もっとも大切な「愛」の捨て身を演じているのが、、もしかしたら、、化鳥という役の八千草薫さん、、、なのかな、、観るたびに感受する側の柔軟性を求められる映画。
マリンバを弾いている時に、聞こえる鳥の鳴き声、、聞いたことのない鳴き方、、不思議な鳥。つかの間の響。
寺山修司の詩にも「ひとり」という鳥(とり)
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