物語り
ライブというのは用意された曲を一つ一つ歌って綴っていく過程で、思いもしない物語が生まれつつある、そういうものでもあると思う。ライブそれ自体にストーリーが生まれるものだと知る。
知らず知らずにゆっくりと、今を生きることを讃えてくれるようなもの、それを「現実の物語り」として感じ、受け止め、ライブに「心」が灯る。
あまり曲の背景を語ることはないけど、それを引き出す共演者というのはすごい存在。自作が社会と繋がる何かであればいいと願うことはあっても、それを意識して故意に作詞をしたりせず、ゆっくり流れるようにそのような言葉が生まれた今を素直に、素朴に語ったり歌ったりでいい、と思わせてくれる共演者と巡り合ったら、それは奇跡なのかもしれず。
自作の歌を歌うべきだと言ってくれるバックグラウンドをいただいたら、ああ、それはとことんセンチメンタルであってもいい。それが今であるなら。手探りするより、今があることを讃えて歌えばいいのではないかと、
自問自答しない選曲時間というのはない。でも弾き歌って終わってみれば、全てが一つのストーリーになっている。
商業的に計算されたノウハウ積んで歌を発信する方法を学んできたわけではない。そんな場にいたのはスタジオミュージシャンの仕事をしていた頃、匂いだけは感じ取っていただろう。でもその匂いは決していい香りがしなかった。自分が苦しいと感じることが多かった。当事者でもないのに。
だから馴れ合いのような現場は自分は向かない。音楽が浸透するわけもない。「歌」が社会と接点を持つことを論ずるものを読んでも、そんな方法論がまるでわからない。
不器用である。それゆえに、自分が奏でる歌をまだまだ探していくのだろう。
共演者という存在が自分の存在に光を灯す。そこからまた窓が広がっていく。
楽屋で話した様々なことを、思い出しながら。
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